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October 19, 2005

E・T

82/米

監督 スティーヴン・スピルバーグ
製作 スティーヴン・スピルバーグ
脚本 メリッサ・マティスン
出演 フランキー堺 石原裕次郎 南田洋子 小林旭 二谷英明他
原作 落語『居残り異星人』 J・G・バラード『幕末太陽の帝国』

【STORY】

なんでも銀河系だけでこの地球に似た惑星の数が百万個以上もあるそうで。

それだけたくさんの惑星がありゃあ、中にはあちらの星の遊郭こちらの星の遊郭を遊び歩いては勘定を踏み倒すのをなりわいとするたちの悪い異星人も1人ぐらいはいるだろうってのが今回のおはなしでございます。

舞台となるのは品川の遊郭。東海道の通り道で、海は近いし、魚はうまいしということで、とりわけさかえていたそうでございます。

「おう。こりゃたいへんだ。ちょいと松どん、源どん、鉄どん、ちょいときてくれ。例の三日三晩遊び続け居続けの異星人・・・ふところにまるで地球の金がなくて勘定が払えないそうだ」
「だからいわんこっちゃない。なんだかようすがおかしいが、ほんとうに大丈夫なのかと念を押したら、おまえさんなんといった。若い頃からムーや南山宏を読み漁ったUFOマニアのおれの異星人を見る目に狂いはねえから安心しろといってたじゃねえか。」
「そりゃあいわれるまでもないんだよ。おれもね、どうにかはなしをつけようと思って何度もとりにいったんだが、このひとが、おれに口をきかせねえんだ。おれが勘定のことをいいかけると、テレパシーで、おれの記憶を消しちまうんだよ。そうなるとおれは因果と、逆行催眠をかけられるまで口がきけなくなるんだ」
「だらしがねえじゃねえか・・・まあ、いいや、おれがかけやってやるから。おい、異星人さん、おちついている場合じゃないよ。いったい勘定をどうするつもりだい。どこかで金のできるあてはないのかい?」
「さあ・・・どうもこまったもんだ」
「人ごとのようにいうない。あんたと一緒に遊郭に遊びにやって来て、先に宇宙戦艦で帰っていった仲間の異星人にお金を持ってきてもらうわけにはいかないのかい?おつかいとか、お手紙とか、超空間通信とか・・・」
「そりゃあ母星がわかりさえすりゃあ、むかえもやりたいけれども、どこなんだかわからねえんだ」
「どこだかわからねえって・・・あんた、仲間だろ?」
「そりゃあ仲間だよ。でも、それがまことにあたらしい仲間なんだ。ここへみんなでやってきたろ、あの晩に第三種接近遭遇をしたんだよ。大マゼラン星雲のあたりで遭遇して一緒に酒を飲んでいるうちにすっかり意気投合して、どうです、このままわかれるのもおしいから、今晩ひとつ銀河の辺境の惑星にでもくりこみましょう・・・ってんで、このうちへきてあそんだあくる朝、ぱっと別れちまったんだ。肌が妙に青いデスラアとかいう変な名前の男だったが、ありゃあいったいどこの星系の人だったのかしら」
「おいおい、ふざけるんじゃないよ。勘定をどうにか・・・」
「だから覚悟はできてますよ」
「えっ、覚悟?」
「宇宙船から数年分の宇宙食は持ってきてるしね。たもとには生命維持装置もはいっている。当分篭城できる構えだしするから、そろそろあんどん部屋へでもさがりますかな」
「おいおい、たいへんなしろものだよ、こいつは・・・・・・」

そのうちに、この異星人のやつ、ほうぼうのお座敷にのこのこ顔を出すようになりました。なにしろ、人間(宇宙人)がずうずうしくって、テレパシーで意思疎通ができて、超能力があって、酒の相手ができるというんですから、ああいう場所にはもってこいで・・・そのうちに、おいらんたちにはかわいがられる。おなじみのお客もできるということになって、なかにはお客のほうでも、ずいぶんのんきなのがあります。

「おお、なんだか座敷がさびしくっていけねえな。おいら陰気なのが大きれえなんだ」
「だれかよびましょうか、小きんさん、梅香さん?」
「芸者なんかよんだっておもしろいもんか。それより地球外生命体をよんでくんな。まだいるんだろ?」
「地球外生命体ですか・・・いますよ、まだ・・・」
「じゃあ、よびねえな」
「では、よんでみましょう。ちょいと、E・Tどーん」
「へーい」
「十三番さんで、お座敷ですよ」
「へえ、ありがとうさんで・・・いよう、こんばんは、これは旦那さま、先夜はまことに失礼を、よいしょ」
なんだかわけがわからない。かたっぱしからお客をとりまきはじめたんで、ほかの若い衆たちは苦情がたいへんで・・・・・・。
「おい、松どん、源どん、鉄どん、みんなこっちへおいで。どうもあきれかえったもんだ。どこの国に異星人が遊郭の座敷でかせぐということがあるんだい。このごろ、われわれのもらいがないとおもっていると、あいつがひとりでもらっちまうんだよ。どうもひどいはなしじゃねえか。なんだい、あのゆうべのさわぎというものは・・・・・・十三番のざしきで、だれかよべっていってるから、芸者でもはいるのかとおもったら、地球外生命体をよべってんだ。するとおいらんものんきだねえ、E・Tどんとよんだよ。すると、またあいつが、13番のおざしきですか、よろしい心得たてんで、自転車で空中浮遊しながらお客のお座敷へ入っていきやがる。お客がそれを見てよろこんでお祝儀をやってるんだから、ばかばかしいったらありゃしねえ・・・・・・ところが、あとからきた客がなおいけなかった。座敷がさびしいから地球外生命体に口をかけてくれ、ただいま地球外生命体はふさがっております、それならはやくベントラベントラで呼び出せって・・・そんなばかなはなしがあるものか。じつはね、旦那にもそういったんだ、いままでの損は損として、どうにかしてあんなやつはたたきだしてしまわなければ、われわれがめしの食いあげだって」
「ええ、旦那さま、異星人をつれてまいりました」
「ああそうかい。さて、おまえさん、あたしが当家の主人だ。おまえさんもふしぎなご縁でこうして長くおいでになるが、いつまでこんなことをしていてもしかたがあるまいし、そうかといって、すぐに勘定をはらうこともできますまい。ひとまず母星へお帰んなさい」
「ありがとうございます。ただ、わたくしの宇宙船は燃料の方がちょいと切れておりましてこのまますぐに母星に帰るというわけにもいかないんでございます。それに大気圏外をまたいでおもてを出ますと、銀河パトロールに御用とつかまってそのまま暗い星へ連れていかれる宇宙海賊の身の上なんで、全速力で逃げ切れるようにエンジンの整備も必要で・・・」
「これはおどろいた。そんな悪事をはたらいた異星人を私の家でかくまっておいたらどんなわざわいにあうかわからない。ここに三百万円あるからこれを使って燃料を買うなりエンジンを整備するなりしてどこにでも行っとくれ」
「へえ、なにからなにまでありがとうございます」
異星人が出ていったあと、旦那は店の若い衆をよんで
「おい、鉄どん。あいつが店のそばで銀河パトロールにつかまったりしては、こっちがめいわくだから、おまえ、どんなようすだかちょいとみてきておくれ」
鉄どんという若い衆がようすをみに異星人のあとをついてくると、異星人は鼻唄をうたいながらのんびりとあるいております。
「おいおい、異星人さん。おまえさんものんきだねえ。もし銀河パトロールにつかまったらどうするんだい?」
「つかまる?おれが?あはははは・・・・・・おめえも女郎屋の若え衆でめしを食うならおれのつらをよくおぼえておけ。アンドロメダへ行こうが、大マゼラン星雲へ行こうが、どこでも相手のしてのねえ遊郭の居残りを商売にしている異星人とはおれのことだ。まだ地球じゃあ1度もやらねえから、おめえのとこをみこんであがったんだ。おかげでちょいとした小づかい稼ぎになった。はい、さようなら」
「あっ、ちくしょうめ、ひどい野郎だ・・・旦那、たいへんでございます」
「どうした?つかまったのか」
「いいえ、つかまるどころか、あいつは居残りを商売にして歩く異星人だそうで・・・」
「そうか、あきれたやつだ。いったいどうやって宇宙の彼方からあたしの店に狙いをつけたんだろう?」
「へへへ、あなたのおつむりは反射(望遠)鏡ですから・・・」


(古賀)

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