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2009年1月18日 (日)

落語『崇徳院』

「若旦那、何でもおかげんが悪いそうで。病名が何だかわからないって言うじゃありませんか」
「医者にはわからないけど、あたしにはよくわかってる。わたしの病は恋わずらいだ」
「へえー、濃いわずらい」
「字が違ってるぞ」
「若旦那は人の喋った言葉の書き文字がわかるんですか」
「そんなことはどうでもいい。この間、有明に行っただろう。そのときに一人のお嬢さんの売っていた崇徳院×藤原頼長のやおい同人誌を見ていらい何も手につかない」
「へえへえ」
「それからは、何を見てもカップリングに見える。漫画を読んでも小説を読んでもカップリングに見える。あの掛け軸の達磨さんが弟子の慧可とのカップリングに見える。横の花瓶が灰皿とのカップリングに見える。鉄瓶が茶こぼしとのカップリングに見える。おまえの顔までが段々と向かいの家のポチとのカップリングに…」
「よしてくださいよ。気色悪い」

「ご苦労さま、倅の奴は何と言ってました?……ふむふむ。そうか。そういうことなら熊さん、倅のために是非ともそのお嬢さんの居所を探してきてほしい。有明中さがしてきておくれ、有明中さがしていなければ秋葉原をさがしてきておくれ。秋葉原をさがしていなければ日本橋、北海道、沖縄、ニューヨーク、アフリカ、火星、アルファ・ケンタウリ…」
「いくら何でもそんなところに同人誌は売ってません」

というわけで崇徳院の同人誌だけをたよりにお嬢さんをさがしに出た熊さん。
「このへんでいいかな…えへん、瀬を…瀬をはやみ…」
「おや、それは崇徳院さんの歌じゃありませんか」
「よくご存じで」
「ええ、娘がどこで知ったのか、最近崇徳院さんの同人サークルに入って」
「えっ、オタクの、もといお宅のお嬢さんが?…つかぬことをうかがいますが、お宅のお嬢さんは美人ですか?」
「親の口から言うのもなんですが、ご近所では耽美なオタクを生んだなどと申します」
「そうですか。『
崇徳院×藤原頼長』のやおい本を読んで濡れたりしますか?」
「濡れはしませんが、ときどき寝小便をやらかします」
「おいくつで?」
「今年で五歳です」
「さようなら…瀬をはやみィ!」
(参考:ちくま文庫『落語百選・春』朝生芳伸編、講談社文庫『古典落語・下』興津要編)

【関連情報】

落語のあらすじ 千字寄席 『崇徳院』

『やおい』(Wikipedia

『コミックマーケット』(Wikipedia

 
(古賀)


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