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2008年11月

2008年11月23日 (日)

落語『朝日鏡』

ある男が「陰謀論にはまる危うさ」という文章を書いて朝日村の領主に渡したところ、喜んだ領主からご褒美をもらうことになった。
「いかなる無理難題でも日本を代表する大メディアの、もとい上の威光をもってかなえてつかわすぞ」
「へえ、ありがとうございます。それでは殿さまの力で死んだとっつぁまに一目あわせてください」
「死んだ父親にか……うーん」
今さら「それだけはできん」とお詫びと訂正を言うこともできず困った領主。
「おまえの父親はどんな男だったのじゃ?」
都合のいい俗説を検証もせずに取り出し整合性も考えずにつぎはぎにしたり、自説の正当性を証明するプロセスをすっ飛ばしたり、一次史料を参照せず『誰々の本に書いてある』という二次史料の引用しかしなかったりする男でございました」
しばらく考えた末に領主が男に唐櫃に入った鏡を渡すと、男は鏡の中の自分を死んだ父親だと思いこんで大喜び。
「あっ、あれまあ、とっつぁまでねえか。おめえさましばらく見ないうちに出家して坊主になっただか」
(参考:ちくま文庫『落語百選・春』麻生芳伸編)

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(古賀)

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2008年11月16日 (日)

落語『うそつき弥次郎世界を股にかける』

「おや、弥次郎さん。ひさしぶりじゃないか。今までどこに行っていたんだい」
「商売で一年ばかり遠国へ行っておりました」
「どこへ行っていたんだい。北海道か?」
「いえ。アフリカへ行ってまいりました」
「アフリカへ……ふーん、ずいぶん遠いところへ行ったな。アフリカ大陸の何という国だい?」
「いえ。アフリカ大陸にあるアフリカという国なんで」
「アフリカ?馬鹿なことを言っちゃ困る。アフリカなんて国はないだろう」
「それがあるんですよ。この国では人の名前も物の名前も挨拶も全部アフリカなんです。王様の名前がアフリカ、お后の名前がアフリカ、学校嫌いの子供らの名前もアフリカ、会う人会う人すべてアフリカ」
「どこかで聞いたような話だな」
「宿にとまると女中さんが『アフリカになさいますか、それともアフリカにしますか?』と聞いてくる。たぶんどっちかが食事でどっちかがお風呂のことだと思うが、こちらはこの国に来たばかりだから細かい発音の違いが識別できない。面倒くさいから『両方にしてくれ』と言うといきなりツボの中に放りこまれ生きたまま煮込まれました」
「おいおい」
「あとから聞いたところによると『宣教師の絶叫煮込み』というその地方特有の風土料理だそうです。風呂がわりにツボの湯につかってさっぱりした後は、煮込み料理をおいしくいただきました」
「ちょっと待て、煮込まれたのはおまえだろう」
「そうですよ」
「食べたのもおまえだな」
「そうです」
「およしよ。馬鹿馬鹿しいや」
「どうしてです?」
「どうしてって…煮込まれたお前をお前自身が食べられるわけがないだろう」
「いや、そんなわけは。わたしの食べた煮込みは確かにわたし自身だったはず…ああ、やっとわかりました」
「何がわかった?」
「今ここにいるわたしはわたしではなく『血で描く』という怪奇小説を書いた朝日新聞の書評委員でした」
「ああ、道理でホラーを吹きっぱなしだ」
(参考:講談社文庫『古典落語・上』興津要編)

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(古賀)

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2008年11月 9日 (日)

落語『鋸』

信濃の善光寺で悪人の首にあてて引くだけで大勢の善男善女の魂を極楽へと導く『山椒大夫の鋸』を売り出したため、地獄には公開処刑された罪人しか来なくなりえんま大王が大弱り。
大泥棒石川五右衛門がえんま大王の命令で首尾良く善光寺から鋸を盗み出したが、あまりにも早く地獄に戻ってきたため疑い深いえんま大王はにせの鋸ではないかと怪しむ。
そこで「証拠をごらんに入れる」と五右衛門が自らの首に鋸をあてて「ひと引きひいては千僧供養、ふた引きひいては万僧供養」と唱えながら引くと、えんま大王、赤鬼、青鬼ほか地獄の全員が罪業消滅してそのままスーッと極楽に行ってしまった。

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(古賀)

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2008年11月 8日 (土)

落語『ぶろぐ泥』後編

「えー、ごめんください」
「はい」
「さようなら」
「おい、気をつけなさいよ、おかしいのがうろついてるから……はてなブックマークでネガコメでもつけられてないかい」
「やれやれ…ネット弁慶なんかとまちがわれちゃあしかたがねえや。名前欄を空白のままで『えー、ごめんください』なんてコメントをつけたら、だれだってあやしむよ。次はこのブログでやってみよう。名前欄は空白にしないで『ちょうちん屋ぶら右衛門』とでも入れておこうか…ごめんくださーい」
「はい、なんのご用ですか」
「ええと、文章をパクり放題のブログはここですか?」
「いいえ、違いますよ」
「それはあいにくでした。いつごろパクり放題になります?」
「パクり放題にはしません」
「それは用心のいいことで…では、またパクり放題になったころにうかがいます」
「なんだい、怪しいやつだなあ。名前を言え」
「そこに書いてるでしょう。ちょうちん屋ぶら右衛門と」
「そんなはずはねえ。ちょうちん屋ぶら右衛門はおれだ」
「ええっ、あなたが?そんなことはないでしょう」
「なにをいってるんだ。ちょうちん屋ぶら右衛門はおれがパソコン通信のころからつかっている由緒正しい名前だ」
「いいえ、あなたでない最近出てきたちょうちん屋ぶら右衛門なんで…もっといい男でちゃんと3次元の女の子とも恋愛ができる草食系男子のぶら右衛門」
「なんだ、ふざけるな!」
「さよなら…いやあ、世の中にはまぬけな名前をつけるやつもいるもんだ。ちょうちん屋ぶら右衛門だなんて…変なところに迷い込んだな。次はこのうす汚いブログにはいってみよう…何だかコメント欄がさわがしいな」
「だから笛育長屋の大家さん。最近更新情報を出さないのはあっしが一生懸命書きためた文章を盗んでいった奴がいるからなんです。噂のぶろぐ泥に違いありません。盗まれたのは映画ネタの文章が100,ニュースネタの文章が100,妖怪ネタの文章が100、その他沢山。裏は花色木綿」
「あはははは」
「なんだ?変な奴が笑いながら八公のブログのコメント欄に出てきやがった。いったい何者だ、おまえは?」
「あははは、あんまりばかばかしいじゃねえか。ブログの文章にまで裏がついていて、それが花色木綿だなんて…笑わせるない…それにぶろぐ泥のしわざなんて言ってるが、おれはまだここでは仕事をしちゃいねえ」
「仕事をしちゃいない?…するとてめえが噂のぶろぐ泥か」
「おや、笛育長屋の大家さんですか…いえね。あっしは泥棒には違いないけど、ここのブログにはパクって出版社に売りつけられるような文章なんてどこにもありゃしねえ」
「どこにもありゃしねえったって、人のブログの文章を盗む稼業をしていれば泥棒じゃねえか…まあ、しかし、なにもまだ盗られたわけじゃなしゆるしてやってもいいが…それにしても八公のやつも八公のやつだ。おめえのところにそんなに人にパクられるような文章やネタが沢山あるはずはねえとおもってたんだ…どうしてあんなうそばっかりならべたんだ?」
「へえ、大家さん。うちは嘘ブログですからうそばっかりならべてあります」
(参考:講談社文庫『古典落語・上』興津要編)


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(古賀)

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落語『ぶろぐ泥』前編

「親分、こんにちは」
「まあ、こっちへきねえ。おまえはどうも仲間うちで評判がよくねえ。あれじゃあ将来大泥棒として大成する見込みがまるっきりないって…いまのうちに堅気になってネットカフェ警備員でもやったらどうだ?」
「せっかくまあ、縁あって親分子分の盃をいただいたんですから、あたしもこれからは、心を入れかえて、いっしょうけんめい悪事にはげみます。だからどうか今まで通り置いてやってください」
「まあ、おまえが真人間に立ちかえって、あっぱれ泥棒稼業にはげむというのなら置いてやらねえこともねえ。最近何か仲間にほめられるような仕事をしたか?」
「このあいだは国ぐるみで贋札を作っているヨーロッパの小国に忍び込みました」
「ほう、ずいぶん大きな仕事をやったな。うまくいったのか?」
「それが親分の前ですがこいつが大笑い…贋札の原版のかわりにお姫様の心を盗んじまったんで…一文にもならない…またつまらぬものを盗ってしまった…」
「ばか、アニメに出てくる泥棒じゃあるまいし、おめえって奴はどうもあきれかえったもんだ……おめえはとてもまともな盗みはできねえから、ぶろぐ泥でもやってみろ」
「ぶろぐ泥ってなんです?」
「ぶろぐ泥というのはな、たとえば、人がブログにのせている文章をこっそりパクって、語尾や単語を変えただけの文章を出版社に売りつけて原稿料をせしめることだ」
「そいつはたちが良くねえ」
「たちのいい泥棒がいるものか。おれがやりかたを教えてやるからよく聞いていろ」


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(古賀)

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