« 落語『うそつき弥次郎』後編 | トップページ | 落語『粗忽館の殺人』後編 »

2006年2月 2日 (木)

落語『粗忽館の殺人』前編

絶海の孤島にある粗忽館に招かれた人々を巻き込む奇怪な事件――と思って戴きたい。

「なんです?おおぜい立って……なんかあったんですか?この部屋の中で……」
「ええ、密室殺人だそうですよ」
「なるほど、密室殺人……これからはじまるんですか?」
「なんだい、わからない人がでてきたなあ……まあ、いいから、こっちへいらっしゃい」
「ははあ、こんなところで、頭から血を流して寝てらあ……おい、みんなみてるじゃねえか。起きたらどうだい」
「起きやしないよ。これは寝てるんじゃないんだよ。死体なんだよ……殺されてるんだから」
「ははあ、まるで殺人事件みたいだ」
「だからさっきから密室殺人だって言ってるじゃないか」
「この野郎、密室殺人なんかされてきまりが悪いんだな。むこうむいて死んでるじゃねえか」
「そういうわけじゃないよ。まあ、知ったかたかどうか顔を見てごらんよ」
「密室殺人死体なんかに知り合いは……ああ、これは熊の野郎だ!」
「熊の野郎だなんていうからには知ってるんだな」
「知ってるもいいとこだよ。こいつと俺とは一心同体も同然なんだ。生まれたときは別々だが死ぬときはバラバラ死体と誓いあった仲だ」
「いやな誓いだな」
「だれがこんな目にあわせたんだ。おめえか」
「じょうだんいっちゃいけない。それを今からみんなで考えようってんだ……おまえさんも一心同体も同然の仲なら誰が犯人か推理しておくれ。なにしろこの粗忽館のある粗忽島は完全に外界との交通が遮断された絶海の孤島で、定期船は5日後だし、通信手段が全く使用不能だから警察に連絡もできないんだ」
「じゃあね、こうしましょう。ここに当人を連れてきますから」
「なんだい、その当人というのは?」
「ですから、密室殺人された当人を……」
「おい、しっかりしなさいよ」
「しっかりするもなにもありゃしねえ。密室殺人の当人ならきっと犯人もわかるはずですからこれならまちがいないなってことがわかったら、みんなだって安心でしょう」
「おい、おまちよ。なんだい、あの人は……とうとういっちまった……当人をつれてくるったって、当人はここで死んでるんじゃないか」
以下後編


(古賀)


« 落語『うそつき弥次郎』後編 | トップページ | 落語『粗忽館の殺人』後編 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/78610/8451540

この記事へのトラックバック一覧です: 落語『粗忽館の殺人』前編:

« 落語『うそつき弥次郎』後編 | トップページ | 落語『粗忽館の殺人』後編 »