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2006年1月

2006年1月31日 (火)

落語『うそつき弥次郎』後編

「どんどん逃げて、もうよかろうと振り返ってみると、そこはめっぽう高い山で、あとで聞くと、これは火星のオリンポス山という山なんだそうで。いつのまにか海賊たちをまいて火星まで逃げてきていた」
「ちょっと待て」
「何か?」
「さっきの話じゃ、後からは宇宙海賊が追ってきて、前方にはエーテルが宇宙の外に流れ落ちている宇宙の果てがあって、そこで進退きわまったんじゃなかったのか?」
「なにを言ってるんですか。今どき宇宙の果てからエーテルが流れ落ちているなんてそんなこと三歳のコンノケンイチでも信じていませんよ」
「そういう問題じゃない」
「やれやれ助かったと一息ついていると、そこに大目玉の火星の怪物に追いかけられて金髪の娘が逃げてきた。これが美しいのなんのって、縮緬細工の牡丹燈籠を提げ髪は文金の高髷に結い、着物は燃え立つような緋縮緬の長襦袢…」
「いくらなんでも太陽系を宇宙船が飛び回る時代にそのコスチュームはねえだろ」
「よし、あの娘を助けてやろうと覚悟をきめて怪物にとびかかると、怪物もさるもの組みついたこちとらを振り落とそうとさかんに跳ね回る。背中に光線銃を撃ってみたが皮膚が硬くてぶ厚いので内臓までダメージが届かない。そこで股ぐらをさぐってみると大きな火玉があった。これこそクロノ神がわれに授ける火玉とおしいただいて、ぎゅっと握りしめると、さしもの怪物もうーんと唸ってひっくり返って息絶えた」
「火玉って何だ?」
「睾丸のことです。これが金星人の睾丸なら金玉だが火星の怪物だから火玉になる。木星人なら木玉、水星人なら水玉、月人なら月玉、土人なら土玉、日蓮上人なら日玉」
「もういいよ」
「死んだように見えても油断はならない、念のために止めをさそうと、腹をビームサーベルで切り開くと、中から次々とタコのような怪物の子供が飛び出した」
「およしよ、ばかばかしい。おまえさん、怪物の睾丸をつかみ殺したといったろ?」
「へえ」
「美女を追いかけていて睾丸がありゃあ牡だろう」
「そうですね」
「牡の腹から子供が出るかい」
「いえ、そこはスペースオペラですから厳格な科学考証にこだわらず娯楽本位に…」
「だからそういう問題じゃないだろ。せめて『雌雄同体でふたなりだった』ぐらいの理屈はつけろよ」
「ああ、今お前さんがいったとおりだ」
「こん畜生、おれのでまにあわすな」
「そう、そこが畜生のあさましさ……」


(古賀)

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2006年1月30日 (月)

落語『うそつき弥次郎』前編

「おや弥次郎さんじゃないか。どうもひさしくあわなかったな」
「これは、ご隠居さん。おひさしぶりです」
「2、3年見かけなかったようだがどこへ行ってたんだい?」
「えへへ、銀河パトロールに入り宇宙を股にかけてあちこちで大活躍してきました」
「これは大きく出たな。一体どんな活躍をしてきたんだ?」
「まず冥王星に悪い宇宙海賊を退治に行ってきました」
「冥王星…ふーん、ずいぶん遠いところへいったな」
「遠いのは宇宙船でひとっ飛びですからいいんですが、寒いのには驚きました」
「そんなに寒いかい?」
「ええ、なにしろ宇宙海賊を見つけて光線銃で撃つと、光線が相手に届く前に途中でかちかちに凍りついて落ちてしまいますんで」
「ばかをいいなさんな。いくらなんでも光線が凍るやつがあるかい」
「それが凍ってしまう、そのぐらい寒さがすごい。宇宙海賊の方もこちらに気がついて熱線銃を撃ち返すんですが、熱線の方もこちらに届く前に途中で冷えてしまいちょうどいい加減の温線になってしまいます」
「おいおい、じょうだんはよしとくれ」
「光線や熱線では勝負がつかないので、それならとばかり水素爆弾や反陽子爆弾を発射して熱核戦争に持ち込もうとしたんですが、これも途中で冥王星の冷たい風に吹かれると熱がさめてしまい東西スパイの暗躍する冷たい戦争に変わってしまう」
「何だかわかったようなわからないような理屈だな」
「これではらちがあかないのでビームサーベルを抜いて接近戦に持ち込むことにしました。9人目まではうまく斬りたおせたんですが、10人目を越えたあたりからビームサーベルの光が寒さのためにどんどん弱くなり、蛍光灯サーベルになり、白熱電球サーベルになり、ついには提灯サーベルになって役に立たなくなりました」
「なんだい、提灯サーベルというのは。変なことばを作っちゃいけないよ」
「相棒のロボットの権助にも『キャプテン、提灯にはおよばねえ。もう夜が明けただ』とからかわれる始末」
「もうおよしなさいよ。ばかばかしい」
「こうなっては仕方がない、命あっての物種と宇宙船で逃げ出すと、あとから海賊がどんどん追ってくる。逃げながら、ひょいと前を見ると、前にあるのは宇宙の果てでそこからどうどうとエーテルが宇宙の外に流れ落ちている。たくさんの海賊に取り囲まれ、逃げ場はなし、進退ここにきわまった」
「どうなったい?」
「以下後編」


(古賀)

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2006年1月29日 (日)

落語『てれすこ』

一人の釣り人が代官所に首のまわりにえりまき状の突起を持つ珍しい蜥蜴を届け出たが誰も名前がわからない。
そこで「この生き物の名前を知る者には百両を与える」とのおふれを出すと、門素汰亜博士と名乗る一人の男があらわれ「これは『てれすこ』という蜥蜴です」といい百両を手に入れた。
その後、その生き物が死んだので役人は首の周りの突起を剥いで剥製にし、また同じようなおふれを出した。
するとまた同じ男があらわれ「この生き物の名は『すてれんきょう』です」と言って百両をせしめようとするので、「不届き者め。同じ蜥蜴がえりまきの有る無しだけで名前が変るものか」と怒った代官はその男を牢屋に放りこみ役人から二百両を騙し取ろうとした罪で打ち首にすることにした。
打ち首の日、最後の別れとして白州にあらわれた息子に男の遺言。

「よいか、せがれ。これからは首のえりまきをもがれたジラースを見ても、決してゴジラと言ってはならんぞ」


(古賀)

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