落語『リバタリアン長屋』(笛育演芸場)
えー、マイケル・サンデルでございます。今日はこれからの正義について一所懸命おしゃべりいたします。いつも申しておりますようにわれわれアメリカ人というのは大まかにいってこの功利主義とリバタリアニズムでございますね。えー、功利主義がありましてリバタリアニズムがある。そこに相克があり笑いが生じるというようなことでございますが……。
「おう、今日みんなに集まってもらったのはほかでもねえ。イチローのやつが1人で年収1800万ドルも稼ぎやがっていまいましいから、奴の富を再分配してみんなの分の店賃まで払わせてやろうとこう思うんだ」
「なんでイチローがおめえの分の店賃まで払わなけりゃならないんだ?」
「そりゃ、おめえ、イチローが1800万ドル稼いでるだけならイチロー1人が幸せなだけじゃねえか。それをみんなの店賃にあててみろ。長屋中のみんなが幸せにならあ。全体的な幸福の増大だ。これすなわち最大多数の最大幸福だ」
「最大幸福だが最後のお多福だか知らねえがずうずうしい野郎だ。そんな理由でイチローの1800万円をみんなに分配することを認めていたらそれと同じ理由でおれの財産をみんなに分配することも認めることになる。人間の基本的権利の侵害ってやつだ。勝手にそんなことをするのを許すわけにはいかねえ」
「おめえの主張は何だかリバタリアン(自由至上主義者)くさいなあ。でもお前んちに財産なんてあったっけ?」
「お金や家財道具のたぐいは一切ないが口うるさい女房が1人いらあ」
「そうか。じゃあおめえんとこはリバタリアンじゃなくてオバタリアンだ」
お後がよろしいようで。
【関連情報】
落語のあらすじ 千字寄席 『長屋の花見』
『マイケル・サンデル』(Wikipedia)
『功利主義』(Wikipedia)
『リバタリアニズム』(Wikipedia)
(古賀)
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