『はたらくおじさん』 星新一『テレビ・ショー』バージョン
〈みなさま、お待たせ致しました。では、政府の提供による教育番組『はたらくおじさん』をお送りいたします。どうぞ、お子さまといっしょにごらんください〉
「どうだい、おまえもこれを見て、少しは勤労意欲がわいてきたかい」
気づかわしげに問う父にむかって、30代後半の息子は画面を見つめながら、落ちついた声で答えた。
「ええ、お父さん。久しぶりにこの番組を見て、ぼく、とっても働く気がわいてきましたよ」
だが、この答が両親に心配をかけまいとするうそであることは、その表情からすぐに知れた。いつもと同じ静かな目には、燃え上がる勤労欲など、少しも湧いていないのだから。
「そうかい。それでいい。終わりまで見るんだよ」
父親は、さとられぬようにそっと涙をぬぐいながら、言った。
人類から急速に失われつつある勤労欲を、なんとかして大きな子供たちに植えつけようとしてリメイクされたNHK教育テレビの社会科番組は、このように祈りをこめ、だが、むなしく放映されつづけられる。
(参考:『ようこそ地球さん』新潮文庫 P255~P256)
【関連情報】
『はたらくおじさん』(Wikipedia)
『ニート』(Wikipedia)
『星新一』(Wikipedia)
(古賀)
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