« 「そこは私のことだから20万頓もある怪獣をえいやっと目よりも高く」「たいそうな力だな」「さしあげようと思ったが流石に重くて無理だった」「なんだ」「仕方がないのでこれに水素瓦斯を詰め込んで風船にした」「おいおい怪獣が風船なんかになるわけないだろう」「それができたてだから柔らかい」 | トップページ | 挨拶をしたうちに第8銀河系から来たなにがしと云うのがいた。妙に女のような優しい声を出す異星人だった。尤も驚いたのはこの放射能の霧の中をフロックコート1枚で歩き回っている。異星人だけに御苦労千万な服装をしたものだ。 »

2007年5月 3日 (木)

「見ろ、こうやってビートルを運転している。と、だしぬけに横から赤い玉がとび出してきた。うわっ、たいへんだ。あわててハンドルを切ろうとする。ところがどちらへ切っていいのかわからない。たた大変だ。おどろいてブレーキを踏もうとする。いや違う。これはミサイルの発射ボタンだ。いったいおれはどこにいるのだ。身体の上にあるこのおかしなものはなんだ。この棒は何という。おれは誰だ。名はなんという。なぜ生きている。どかあん」

イデはあきれておれを眺め続けている。

「これが異星人の憑依現象だ」おれは額の汗を拭いながらイデにそういった。

「それ以後は危機に直面するたびに、おれはいつも巨大な異星人に変身するんだ」

「あのう、それは一種の幻覚では」と、イデはおそるおそる訊ねた。

「そうじゃない、異星人の憑依現象はむしろ頭のいい人間にしか起らない、これは情感生活の豊富な、責任感の強い、つまりどちらかといえば知力体力ともにトップクラスのエリート隊員に起りやすいんだ」

「ははあ。そうですか」イデは疑わしげな眼で、じっとおれを見た。

おれは彼の眼を見返し、静かにいった。「あんたの考えていることをあててやろうか。『気ちがいはかならず、自分が何か超人的な存在から力を与えられたものと信じている』そうだろう」

イデはぎくとして身を引いた。

おれはけたけたと笑った。「どうだ。あたっただろう」笑い続けた。

筒井康隆『ウルトラ作戦第1号』(参考:『筒井順慶』)

【関連情報】

『ウルトラマン』(Wikipedia

『筒井康隆』(Wikipedia

 

(古賀)

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