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2008年12月

2008年12月28日 (日)

鉄っちゃん

夏目漱石作。

親譲りの鉄道マニアで小供のときから鉄道を利用した殺人ばかりしている。
なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。
新幹線の二階から外を見ていたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから仙台まで行って殺人を犯して、殺害時刻には横浜に居たことにする事はできまい。弱虫やーい、と囃したてたからである。
警察に捕まって帰って来た時、おやじが大きな眼をして時刻表トリックを使いたいためだけに殺人をする奴があるかと云ったから、この次は密室トリックを使って見せますと答えた。

【関連情報】

『夏目漱石』(Wikipedia

『坊つちゃん』(Wikipedia

『鉄道ファン』(Wikipedia

 
(古賀)

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2008年12月21日 (日)

妹粥

芥川龍之介作。

二十世紀の末か、二十一世紀の始にあった話であろう。どちらにしても時代はさして、この話に大事な役を勤めていない。――その頃、巨大掲示板のスレッドに出没する名無しさんの中に、51と呼ばれる男がいた。これも、51と番号で書かずに、何の誰と、ちゃんと姓名を明らかにしたいのであるが、生憎過去ログにはそれが伝わっていない。恐らくは、実際、51をゲットする以外には何の能もない、平凡な男だったのだろう。
この男が、何時、どうして、巨大掲示板にあらわれるようになったのか、それは誰も知っていない。余程以前から、同じようなAAに、同じような煽り文句で、同じような役目を、飽きずに毎回繰り返している事だけは、確である。今では誰が見ても、この男にDQNでない時があったとは思われない。その代り、生まれた時から、あの通り寒そうな発言と、形ばかりの罵倒とを、繰り返していたという気がする。こう云う特徴を具えた男が、周囲から受ける待遇は、恐らく書くまでもないことであろう。
では、この名無しの主人公は、唯、軽蔑される為にのみ生れてきた人間で、別に何の希望も持っていないかと云うと、そうでもない。51は五六年前から妹と云う物に、異常な執着を持っている。当時はこれが、無上の萌えとして、上は万乗の君の夜のオカズにさえ、上せられた。従って、吾51の如き人間の手には、年に数度、同人誌同人ゲーム即売会の折にしか、はいらない。そこで妹に飽きる程ハァハァして見たいと云う事が久しい前から、彼の唯一の欲望になっていた。勿論、彼は、それを誰にも話したことがない。いや彼自身さえ、それが、彼の一生を貫いている欲望だとは、明白に意識しなかった事であろう。が事実は、彼がその為に生きていると云っても、差支えない程であった。しかし、51が夢想していた、「妹に飽かむ」事は、存外容易に事実となって現れた。その始終を書こうと云うのが、この話の目的なのである。

   ―――――――――――――――――

「何時になったら、妹に飽ける事かのう…」
「>51殿は、妹に飽かれたことがないそうな」
51の語が完るか完らないかの中に、誰かが、嘲笑った。レスの主は、その頃、51と同じ板の同じスレッドに常駐していた1である。このエロ板の野人は、生活の方法を二つしか心得ていない。一つはスレッドを立てることで、他の一つはDQNを笑う事である。
「お気の毒な事じゃ。お望みならこの1がお飽かせ申そう」
始終叩かれている厨房は、たまに好意的なレスを貰っても容易に心を許さない。51は、例の笑うのか、泣くのか、わからないような笑顔をして、1のレスと、妹絵の壁紙とを、等分に見比べていた。
「おいやかな」
「……」
「どうじゃ」
「……」
「おいやなら、たってとは申すまい」
「いや……忝うござる」

   ―――――――――――――――――

1: 【殿の御意】切口三寸長さ五尺の妹のエロ画像希望【明朝まで】part51(876) 

   ―――――――――――――――――

51は、寝起きの眼をこすりながら、殆ど周章に近い驚愕に襲われて、茫然と、掲示板を見つめた。前にあるのは妹のエロ画像をなみなみと海の如くたたえたおそるべき数のスレッドである。その分量を見ただけで、吾51の同情すべき妹萌えは、実に、この時もう、一半を滅却してしまったのである。
「>51殿は妹に飽かれた事が、ござらぬげな。どうぞ、存分にハァハァして下され」
「いや、もう十分でござる。……失礼ながら、十分でござる」

【関連情報】

『芥川龍之介』(Wikipedia

『芋粥』(Wikipedia

『芋粥』(青空文庫)

 
(古賀)

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